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メッセンジャー
米井嘉一先生
ドクター監修のアンチエイジングトピック
メディカル
〜米井嘉一先生のコラム〜体がサビることで動脈硬化が引き起こす、怖〜い病気 〜米井嘉一先生のコラム〜体がサビることで動脈硬化が引き起こす、怖〜い病気
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大切な脳神経細胞が、サビに最も弱い?

 金属と同じように、ヒトの体も酸化するのをご存じでしょうか? とは言っても、金属の酸化のように「サビ」というかたちで目に見えるわけではありません。でも、目に見えず、自覚がない方が恐ろしいのです。
 ヒトの体にとって、サビとは「細胞を破壊する」ことですが、サビの原因となるのが活性酸素などの「フリーラジカル」です。これは通常の呼吸によって発生し、体内では殺菌作用などの重要な役割も担っています。人体にとっては有益な面もあり、少量のフリーラジカルは必要なのですが、過剰に発生すると有害なものに変わってしまいます。
 フリーラジカルには強い酸化作用があり、周囲の物質から電子を奪いとる力を持っています。そして最初のターゲットになるのが、細胞膜の重要な構成要素である「脂質」です。細胞膜は、細胞の外から必要な栄養を取り込む一方で、老廃物を外に捨てる役割があります。ですが、細胞膜の脂質がフリーラジカルによって酸化されると、細胞は正常に働かず、老廃物を捨てられなくなります。動脈硬化は、そうした細胞が体のあちこちで増えることによって生じる病気の一つです。

 人体にある臓器、組織のうち、もっともサビに弱いものの一つは脳神経細胞です。脳神経細胞は、ヒトの生涯を通して細胞分裂して増えることがなく、一つの細胞が収縮と弛緩を繰り返す「長寿」の細胞です。そのため、サビは大敵なのです。
 健康な人でも、脳神経細胞は毎日10万個単位で死んでいきます。年をとるごとに脳の働きが衰えるのは、そのためです。脳細胞の活動を支えているのはブドウ糖と酸素ですが、それらを確保するために血管が高度に発達し、大量出血した場合でも、脳には最後まで血が流れる仕組みになっています。
 それなのに脳細胞は酸素不足に非常に弱く、無酸素状態が常温で5分間続くと、細胞は死んでしまいます。つまり、脳神経細胞は動脈硬化の影響をもっとも受けやすく、動脈硬化が進めば、脳出血や脳梗塞といった脳の病気を引き起こしてしまうのです。
 人間にとって一番大切なものの一つである脳神経細胞が、もっともサビに弱いとは皮肉ですが、だからこそ体をサビさせないようにしなければいけないのです。

心筋、目、耳……動脈硬化が及ぼす様々な悪影響
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心筋、目、耳……動脈硬化が及ぼす様々な悪影響

 血管は全身に走っているため、動脈硬化による影響は他の臓器にも及びます。なかでも、脳と並んで深刻なダメージを受けるのが心臓です。動脈硬化により狭心症や心筋梗塞といった病気が引き起こされますが、サビは心臓そのものにも悪影響を及ぼします。
 脳神経細胞と同様、心臓の筋肉「心筋」も、一生同じ細胞が動き続けます。そのため年齢とともに老化しますが、老化のメカニズムこそ「酸化=サビ」なのです。もちろん、心筋には酸化反応を防ぐためのサビ止めの仕組みが、あらかじめ備わってはいるのですが。
 酸化の防御システムとして最も大切な働きをするのが、コエンザイムQ10です。コエンザイムQ10は、心筋細胞のミトコンドリアの中にあり、強力な抗酸化作用を持っています。しかし、ミトコンドリアがエネルギーを生産する過程で様々なフリーラジカルが生まれ、それが細胞膜やミトコンドリアの膜の脂質を「酸化=サビ」させてしまうのです。

 動脈硬化が原因で起きる体のトラブルは、意外なことに目にも及びます。動脈硬化で網膜の血管が弱くなると、眼底出血を起こしやすくなります。さらに高血圧や糖尿病の症状がある場合は、血管は余計にもろくなり、目の動脈硬化がじわじわと進行して突然症状が現れます。緑内障を併発したり、最悪のケースでは失明したりすることもありえます。
 眼底出血は、体中の血管が弱くなっていることを警告するサイン。眼底出血を起こす人は、脳出血や脳梗塞を起こす危険性も高いので要注意です。
 また、水晶体が白濁して視力が衰える「白内障」の原因は、フリーラジカルが水晶体のタンパク質にダメージを与え、変質させてしまうためだという専門家もいます。
 「加齢性黄斑変性症」という目の病気があります。徐々に視力が低下したり、視野が狭くなったりして、最後には失明してしまう危険のある病気ですが、効果的な治療法がないため、この病気で悩む人は多いのです。これも、フリーラジカルによる酸化が大きな原因のようです。
 さらに動脈硬化は、聴力にも悪い影響を及ぼすことが分かっています。他にも、言語障害や精神障害、運動障害、認知症といった様々な症状を引き起こします。

日本人の三大死因を引き起こす「酸化=サビ」
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日本人の三大死因を引き起こす「酸化=サビ」

 そもそも動脈硬化は、年を取って動脈がしなやかさを失い、劣化した状態のことです。そのため、これまで動脈硬化は老化にともなう生理的な変化で、避けられないものと考えられてきました。しかし、最近は動脈硬化が進むメカニズムが解明されてきたこともあり、一つの疾患ととらえて予防と治療の対象にすべきだと思います。
 一度硬化した血管を完全にもとに戻すのはとても難しいので、動脈硬化は未然に予防するのが一番であり、サビさせない工夫と努力が大切なのです。

 大量発生したフリーラジカルが体に及ぼすもう一つの怖い影響……それは、細胞の核の中にある遺伝子(DNA)をサビさせることです。フリーラジカルに攻撃された遺伝子は、配列が崩れます。それを修復するのが「酵素(エンザイム)」なのですが、修復が間に合わないと遺伝子のいくつかが「変性遺伝子」となってDNAに障害が起こり、遺伝子の突然変異につながってガン細胞が発生しやすくなるのです。
 最近の研究では、フリーラジカルがリウマチやアルツハイマー病など、様々な病気の発生に深く関わっていることが解明されてきました。
 先ほどご説明したように、脳神経細胞と心筋は最もフリーラジカルの影響を受けやすいのですが、「ガン・脳卒中・心臓病」という日本人の三大死因は、その原因をさかのぼると「酸化=サビ」にたどりつくのです。健康を保つためには、フリーラジカルを減らす……つまり体の中のサビ止め能力を高めることが、いかに大切かお分かり頂けるでしょう。

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