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和紙の灯りの持つ魅力と、癒しの力
和紙の灯りの持つ魅力と、癒しの力
 灯りを見ていると、ほっとして心が落ち着く……そう感じたことはありませんか? それは、焚き火に心の安らぎを見出した古代からの、人間の原始的な感覚なのかもしれません。  今回、インテリアライフ・プランナーの坂本まゆ美さんに、和紙の灯りの魅力や癒しの力についてお伺いしました。また、太陽の動きと照明の高さの関連性についても教えて頂き、目から鱗が落ちることしきり! 一日の終わりに和紙の灯りをともし、和紙からこぼれてくる柔らかい光を楽しんでみてはいかがでしょうか。
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和紙の灯りの魅力

 文京区千石。緑豊かな都会のオアシス「六義園」近くの閑静な住宅街に、坂本まゆ美さんが代表取締役を務める「株式会社からく」の事務所があります。坂本さんはインテリアライフ・プランナーとしてインテリアの設計・施工やリフォーム、ディスプレイなどに携わるほか、カルチャースクールや事務所で「和のスタイル」を提供するワークショップを開いていらっしゃいます。
 今回、モンナージュ編集部が注目したのは、坂本さんがワークショップで提案していらっしゃる「和紙の灯り」。昔から日本人が親しんできた素材「和紙」を使うことで、灯りに和みの要素をプラスするのです。

坂本まゆ美さん  

モンナージュ:和紙の灯りを作り始めたきっかけは何でしょう?

坂本まゆ美さん(以下坂本):設計の仕事をしていた時に、クライアントから「洋室にも合う和のインテリアを」というご要望が出ました。スタイリッシュでモダンな和のインテリアを探したのですが、売っているのは洋室に合わない民芸調のものばかり。そこで、自分で和紙の灯りやパネルを作ってご提案したところ、とても喜んで頂けました。それをきっかけに、和のライフ・プランニングにも携わるようになりました。

モンナージュ:坂本さんがワークショップで教えていらっしゃる「和紙の灯り」は、アクリルに直接和紙を貼り、木台の上に置くという、オリジナルな灯りだそうですね。

坂本:ええ。アクリルという素材は少し高いのですが、最近は手に入れやすくなり、加工しやすくなりました。アクリルを使うことにより、ワークショップ参加者は、初心者でも簡単に和紙の灯りを作ることができます。また、夏は涼しげな白や水色、冬は温かみのある茶色というように、アクリルのシェードを変えることで、季節によって灯りを「着がえる」ことができ、季節感を楽しめます。

モンナージュ:多くの方々から和紙の灯りのニーズがあったそうですが、和紙の灯りには人々が求めるようなヒーリング効果があるのでしょうか?

坂本:私たちが日頃使っている灯りには、蛍光灯や白熱灯などがありますよね。それに和紙をプラスすることで、灯りのこぼれる量が加減され、優しい感じになります。和紙を透けて来る灯りというのは、日本人が古来から親しんで来た障子や行燈から透けて来る灯りであり、それは日本人がDNAとして持っている「心地よさ」なのです。

 

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灯りと「癒し」について

  和紙の灯り
  和紙の灯り
  和紙の灯り

モンナージュ:人間には、灯りを見ると癒されるという本能があるのでしょうか。

坂本:ええ。人間が一番心地よさを感じるのは、キャンドルなどの炎の灯りだそうですよ。炎のゆらぎは、心地よさの指標である「1/f(えふぶんのいち)の揺らぎ」と言われています。

モンナージュ:「1/fの揺らぎ」とは何ですか?

坂本:風の音、小川のせせらぎ、ろうそくの炎のゆらぎなど、様々な自然現象の中に存在する、人間が心地よく感じる周波数のこと。ゆったりと揺れる炎は、私たちの脳に心地よさを与えてくれます。炎の次に人間が心地よく感じる灯りは、何かを通って来た「間接的な灯り」。障子から透けて来る灯り、隣の部屋からもれてくる灯り……その延長線上にある和紙の灯りも、柔らかい灯りと感じるのです。特に私がおすすめしたいのは「夜」。他の灯りを落とした状態で、和紙の灯りを使って頂きたいですね。

モンナージュ:だから私たち日本人は、幽玄でほのかな灯りに安らぎを覚えるのでしょうか。

坂本:そうですね。大事なのは、灯りの「光源」が直接見えないこと。光源が直接見えると、人間はストレスを感じてしまうため、灯りとしては良くないとされています。家のリフォームなどでも、クライアントが間接照明を多く希望されるのは、そのような理由があるのでしょう。また、間接照明にすることによって「影」が生まれ、安らぎを感じるのです。

モンナージュ:間接照明は、どこに置いたらいいのでしょう。

坂本:壁の近くがいいと思います。壁の近くに置くと、影が出るからです。例えば、液晶テレビの後ろから照明を当てると、テレビのシルエットが浮かんで、いつものテレビもインテリアの一部として愉しめます。また、観葉植物に間接照明を当てるのも、昼間の雰囲気とは違う面白い効果が得られます。横から光を当てると壁に長い影が落ち、プレ−ンな壁に葉の模様が現れ、夜にだけ愉しめる影絵のような視覚効果になるんですよ。

モンナージュ:テレビの後ろから照明を当てると、画面とまわりとの明るさのギャップがなく、また光が画面で反射しないので、目に優しいと言いますよね。観葉植物に間接照明を当てるのも、素敵なアイディアですね!


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太陽の動きと照明の高さの関連性

坂本:最近、間接照明を希望される方が多いのです。朝、昼、晩と、灯りを使い分けたいという希望があるようです。

モンナージュ:灯りを使い分けるのですか?

坂本:ええ。元々人間の生活サイクルは、朝起きて、夜寝る、というもの。太陽は朝昇り、昼に一番高く上がって、夜に沈みますよね? 灯りもそれと一緒。昼間は真上から照らす照明でもいいのですが、夜は自分の目線より下に照明がある方が、人間はくつろげるのです。

モンナージュ:そういうふうに照明をとらえたことって、今までありませんでした!確かに、かつて人間が自然の中で生活をしていた頃は、太陽の昇降に従って人間の行動も決まっていたのですよね。

坂本:その自然な生活に逆らうように夜も煌々と明るくして、なおかつインターネットで明滅する画面を見てから寝ようとしても、無理なんですよね(笑)。人間も動物ですから、太陽の動きと照明の高さを合わせることが、人間の生理に一番合っているのです。ですので、私がご提案する灯りも、目線より下。寝る1時間ほど前から天井のライトを消して、目線から下の間接照明に切り替えます。太陽の動きと照明の動きを合わせることで、朝は自然に起き、夜は自然に眠くなる。実際に、夜に眠れない認知症の方の治療法の一つとして、昼間は明るい光を浴びさせて体に昼間だと認識させ、夜は暗くして眠気を誘う、という方法があるんですって。医療の中でも灯りは使われているのです。
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灯りや色彩と健康の関係

モンナージュ:灯りと医療や健康との関係は、編集部でも興味があるんです!

坂本:病院建築でも、灯りをうまく使っていこうという流れがあります。白い壁を止め、蛍光灯も止めて暖色系の灯りに変えようという動きです。待合室が白い壁に白い蛍光灯で殺風景だと、病気で来られた方の気持ちが沈んでしまいますよね。そこで、壁をピンクや水色にし、暖色系の灯りにすると、待っている方の気持ちもほぐれるのだそうです。病室も、白い壁や白いベッドカバーが本当にいいのか疑問視されていますし、看護士さんの服も淡いピンクになるなど、病院の中で少しずつ色が変わって来ているようですね。

モンナージュ:では、私たちが住む家の壁も、白ではない方がいいのでしょうか?

坂本:そうですね、クリーム色がかっている壁の方が、目に優しいのです。

モンナージュ:灯りの色としては、暖色系の方がいいのでしょうか。

坂本:青系はクールかつ寒々しく冷たい印象を与えてしまいます。そういう感じをあえて与えた方がいいレストランなどの施設は別ですが、病院やアロマテラピー・ショップなどは暖色系が多いですね。「ビタミンカラー」と言われていますが、オレンジや黄色があると、人は勇気や明るさをもらえ、覇気が出るようです。

モンナージュ:それは、太陽や炎が黄みがかっているからでしょうか。

坂本:そういうことも、あるかもしれませんね。海に沈む夕焼けや朝焼けを見ると、人は綺麗だと思い、心地よさを感じますよね。炎もそうでしょう。
和紙の灯り
和紙の灯り
和紙の灯り
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点の灯りと面の灯り

坂本:日本の住宅は、世界でもまれに見る「明るい住宅」。日本の灯りは、天井の蛍光灯を見ると分かるように「面」の灯りなんです。それに対して、ヨーロッパの灯りは、スタンドやベッドサイドのランプなどのような「点」の灯り。ヨーロッパの高級ホテルに行くと、照明が暗めで落ち着いていますよね。これが点の灯りと面の灯りの、文化の違いです。日本も昔は行燈のような「点」の灯りでしたが、技術が発達して好景気になるのに従って、面の灯りになってきました。面の灯りだと影ものっぺりし、全体が明るくて気持ちが休まらず、ストレスを感じてしまうのです。点の灯りは、明るさと影で立体感が出ます。日本の住宅は明る過ぎ。本当にそれだけの光源が必要なのか、疑問ですよね。

モンナージュ:オフィスの灯りはどうでしょう?

坂本:覚醒して仕事の効率を図るためには、天井からの面の灯りがいいでしょう。商業施設や飛行場など大人数が集まる場所も、同じ明るさで照らす必要がありますので、面の灯りがいいですね。

モンナージュ:面の灯りが必要とされる場所もあるのですね。点の灯りと面の灯り……どちらも必要で、我々の生活に密着しているのですね。TPOによって、使い分けた方がいいということでしょうか。

坂本:ええ。朝はカーテンを開ければ、自然光が入って来ますし、昼間は蛍光灯などの天井光(面の灯り)。夜になったら上の電気から消していき、目線より下の間接照明(点の灯り)で1時間くらい脳を休ませると、いいアルファ派が出て深い眠りが得られます。最近、寝室は間接照明だけでいいとおっしゃる方が多く、寝室の天井に照明をつける方が少なくなりました。

モンナージュ:みんな、間接照明の良さに気づき始めているのかしら?

坂本:そうでしょうね。それと、灯りを生活の中に上手に取り入れる方法が分かって来たのだと思います。また、ストレスなどに関心が集まる中、家の中のインテリアや灯りを見直す動きも出ているようです。少し高くても、照明に調光のスイッチを付けられる方も多いですね。
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リラックスできるインテリア

モンナージュ:リラックスできるインテリアについて、他にアイディアはありますか?

坂本:最近、インテリアでの売れ筋は「木目系」。一時はカラーパイプやビビッドな色のインテリアが好まれましたが、元に戻ってナチュラル系のものが好まれています。世界的にも、日本の飛騨の家具や、日本人独特の技術、木の良さが見直されて来ているのです。飛騨は「ジャパニーズ・モダン」として家具を世界に向けて売り出していて、注目されています。それに併せて、障子や畳など、日本の昔の生活が見直されて来ているようです。ありのままの自然の色を楽しみ、そこに照らされる自然の灯りを楽しむ、といった感じでしょうか。

モンナージュ:文明が進み、人工的なものに囲まれていた人々が、自然に回帰しようとしているのかもしれませんね。
 坂本まゆ美さんプロフィール
坂本まゆ美さん 株式会社からく代表取締役。二級建築士、インテリアライフ・プランナー、宅地建物取引主任者。インテリアの設計・施工やリフォ−ム、インテリア雑貨の企画・製作などに携わる傍ら、カルチャ−教室などで和紙の灯りや和モダンスタイルのアレンジのワークショップを開くなど、多彩な活動をしている。
 Information
株式会社からく
【住所】
 〒113-0021 東京都文京区本駒込2-12-16
【お問い合わせ】
 TEL:03-3944-0402 FAX:020-4669-8600 HP:http://enjoy1.bb-east.ne.jp/ ̄karaku/
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